2026-27シーズンより、アソシエイトヘッドコーチに就任し、実質的に琉球ゴールデンキングスの指揮を執るアンソニー・マクヘンリー氏のインタビュー後編をお届けします。

 前編では、マクヘンリー氏が2023年にキングスでコーチデビューを果たすまでの選手としてのキャリアをたどりました。一線でコートに立ち続けた経験は、現在のコーチ業にも大いに活かされているといいます。

 後編では、アソシエイトヘッドコーチ就任の受け止めや桶谷大 前ヘッドコーチの下で経験を積んだ直近3シーズンでの学び、Bプレミア元年となる2026-27シーズンへの意気込みなどを聞きました。

ーアソシエイトヘッドコーチ就任の受け止めを教えてください。

 なにがなんでも、すぐにヘッドコーチになりたいというわけではなく、素晴らしいコーチ陣がいる中で最大限に学べたらいいなという意気込みで沖縄に戻ってきたこともあり、驚きました。少しナーバスな気持ちにもなりましたが、とても名誉なことだと思っています。こういう機会をいただけたことに対して、とても感謝の気持ちがあります。沖縄という場所が大好きなので、この仕事に対して真剣に向き合いたいと考えています。

ーご自身の背番号「5」が永久欠番になったチームで指揮を執ることに対しては、どのような受け止めですか?

 自分でもストーリー性があるなとは思っています。自分がこういう状況になるとは全く想像していなかったので、キングスからいただいたすべての機会に感謝しています。永久欠番として沖縄サントリーアリーナにユニフォームを掲げてもらっていることも、とても光栄なことです。ただ、自分がやるべきことは、毎日より良い人間になること、そして、より良いコーチになりたいと考えて過ごすことだけだと思っています。


ー直近3シーズン、アシスタントコーチとしてどのような役割を担いましたか?

 アシスタントコーチにはいろいろな役割がありますが、主な役割としては、桶谷 前ヘッドコーチのメッセージが、特に外国籍選手にクリアに伝わっているかということには気を配っていました。また、自分自身も選手としていろいろな経験をしてきた中で、状況に合ったアドバイスをすることも意識していました。それに関しては、選手の国籍は関係ありません。一人ひとりに向き合い、成長を促してきました。



ー昨シーズンで言うと、#21 デイミアン・ドットソン選手がシーズン途中に加入し、彼をチームにフィットさせるためにコーチ陣も試行錯誤をしたと思います。一つの事例として、彼に対してはどのようなアプローチをしたのですか?

 ドットソンに限らず、同じ状況の選手に関しては誰にでも言えることですが、チームが同じメンバーで何カ月も積み上げてきた中にポンと放り込まれるというのは、その時点で後れを取っているということです。それはチームも分かっているし、彼自身も感じていたと思います。ただ、彼に伝えていたのは、無理にフィットしようとするよりも、とにかく「自分自身でいてほしい」ということでした。十分にチーム練習ができる状況でもなかったので、彼の良さをどう生かすかはコーチ陣の仕事だと思っていました。



ー桶谷 前ヘッドコーチから学んだことを教えてください。

 自分自身であり続けることを説く姿はすごく勉強になりました。それぞれが自分の役割を分かっている中、桶谷 前ヘッドコーチは無理に細かいマネジメントをするわけではなく、導くようなコーチングをしていました。まだ自分のコーチングスタイルを確立するまではいきませんが、まわりに20年、30年という長いコーチキャリアを送っている人たちがいる中で、多くの学びがありました。今はオフシーズンに入り、いろいろ準備している段階ですが、多くのことに気を配らなければならず、すでにアシスタントコーチとヘッドコーチの違いを身をもって感じています。

ーヘッドコーチを引き継ぐにあたって、桶谷前ヘッドコーチから伝えられたことはありますか?

 「ただただやり続けなさい」ということを伝えられました。アソシエイトヘッドコーチになってから初めての練習も、初めての試合も、その時にならないと分からない状況はたくさんあります。だからこそ、成長するためには「やり続ける」ということが大切です。桶谷 前ヘッドコーチからは、アドバイス以上に多くの自信をいただいたと思っています。


ーコーチをしていて印象に残っていることはありますか?

 いつも手探りで教えていて、その内容が正しかったかどうかは、選手が実際にコート上で表現した時にしか分かりません。特定の選手に対してプレーの映像を見せたり、コート上でマンツーマンでいろいろ教えたりした後、本人がそれを試合で実践してくれた時は、「やっていて良かった」「教えたことは間違っていなかった」と感じられ、その瞬間がとても好きです。

ー2026-27シーズンはスタッフ陣だけでなく、選手の顔ぶれも大きく変わります。どのようなシーズンにしたいですか?

 安永淳一GMの編成でキングスは良いフランチャイズであり続けているので、とても信頼しています。自分自身がアソシエイトヘッドコーチ1年目というところもあり、まずはキングスが築き上げてきたカルチャーをより良いものにして、次世代につないでいくというところに最も重きを置いています。#14 岸本隆一選手らが退団し、もちろん大きな穴を埋めないといけませんが、それ以上に、どうやって試合に勝つか、そして、ファンの皆さんにどうエキサイティングなバスケットボールを見せられるかを考えています。

ー岸本選手はご自身がプレーヤーの時にも共闘し、とても思い入れのある選手だと思います。ご自身もキングスを離れた後も素晴らしいキャリアを送りましたが、岸本選手にはこれからどんなキャリアを送っていってほしいですか?

 岸本選手の退団はとても残念なことではありますが、彼が今後も選手として、人として成功することを願っています。ルーキーとしてキングスに加入した時から見てきましたが、彼は14シーズンにわたってキングスメンタリティを背負い続けてきました。そして、彼が沖縄のコミュニティにとってどんな存在だったのかも見てきました。他の誰にも代えられないスペシャルな選手ですし、日本全体のバスケファンも同じように思っていると信じています。自分自身も、彼がキングスのために、そして沖縄のためにやってきたことを理解しているつもりなので、しっかりと次世代につないでいかないといけないという責任感を持っています。



ー2026-27シーズン、二人三脚でチームをけん引することになる穂坂健祐アソシエイトコーチ兼ヘッドコーチに対しては、どのような印象を持っていますか?

 彼はコーチとしての経験が長く、賢い人間であるうえに、とても努力家です。自分が困った時には、すべての答えを持っているような存在で、いつでも相談ができます。隣に穂坂コーチがいることはとてもありがたく、幸運なことです。

ーチームの指揮を執る立場として、どんなカラーを出したいですか?

 特にディフェンスではメンタルの強いタフなチームでありたいと思っています。オフェンスは速いペースなど、観ていて楽しいバスケットボールがしたいです。ありがたいことに、沖縄サントリーアリーナは毎試合のようにファンの皆さんが満員にしてくださるので、皆さんのエネルギーがそこに乗っかることで、より良いスタイルが実現できると思っています。

ー18年にわたって日本のプロリーグに関わっていますが、この間に日本のバスケットボールはどのように変化したと感じていますか?

 日本人選手のレベルは大きく変化しました。NBAでプレーできている選手もいて、そのレベルを目指せる選手もたくさんいます。自分が日本に来た時には2つのリーグがありましたが、Bリーグが誕生して、投資がしっかりと成長につながっています。元NBA選手のほか、トップレベルのコーチも世界中から来ていて、勝つことの難しさは年々増しています。大差がつくような試合はほとんど見られなくなりました。アウェーの試合でも満員の会場が増えてきていて、ファンの関心も高くなってきていると思います。

ーキングスファンの印象はいかがですか?

 とても素晴らしく、ユニークで、県外の会場では見ないようなスペシャルなファンが多いと感じています。沖縄固有の文化など、地域的なバックグラウンドが影響しているのかなと思います。クラブもファンを巻き込むエンターテインメントを磨いていて、素晴らしい働きをしています。


ー最後に、ファンへメッセージをお願いします。

 2026-27シーズンをすごく楽しみにしています。ファンの皆さんは自分たちにとってとても大切な存在です。ファンのサポートがあるからこそ、キングスの未来は明るく、これからも成長していけるのだと思っています。自分は初めてのヘッドコーチなので、少し忍耐強く試合を観てもらう時期もあるかとは思います。それでも、コーチとして成長していき、先代のヘッドコーチたちが築いてきたキングスのウィニングカルチャーを引き継いでいきたいです。それは、ファンなしではできません。家族や友達などと一緒に沖縄サントリーアリーナに来て、客席を満員にしてくれるとうれしいです。