公開日
琉球ゴールデンキングス

琉球ゴールデンキングス

「考え過ぎない」それが僕の“スタイル” #15 松脇圭志

 僕の強みの一つはスリーポイントシュート(3P)だ。その武器を磨いたおかげで、学生時代に所属チームで結果を残すことができた。いま琉球ゴールデンキングスという強豪チームでプレーできていることにも繋がっている。プロ選手として、何か個性を持つことは大事だ。

 ただ、3Pに対して何か哲学のようなものがあるかと言われれば、全く無い。

 よく記者の人たちに「3Pに対するこだわりは?」「シュートを打つ時にどんなことを意識しているのか?」などと聞かれることがある。適当と言ったら言い過ぎかもしれないが、正直に言って、あまり深く考えていない。だから、いつも答えに困ってしまう。

 もちろん、常に「決め切る」という気持ちはあるが、打つ瞬間にそう思って打っている訳ではない。性格的なこともあるとは思うけど、自分は考え過ぎるとダメになることが分かっているから、感覚で打つようにしている。

 ただ、学生の時から「遠いところからシュートを入れるのがカッコイイ」と思っていたから、とにかく練習でたくさん打った。中学の頃は一日に1,000本打ったこともある。その時に培った自信が、今に生きているのは間違いない。

金丸さんとか、SLAM DUNKの三井寿も14番を着ている。14番の選手が上手くて、カッコイイと思っていた

 僕は4人きょうだいの3番目。記憶にはないが、バスケをやっていた兄、姉と遊び感覚でやっていて、小学校2年生の時にミニバスケのチームに入った。小学校で身長が165cmまで伸びたから、全部のポジションをやっている感じだった。

 3Pが得意になったのは、中学2年の頃から。中学で身長が180cmくらいあったけど、後輩に180cm以上の選手が2人いて、彼らがゴール下のインサイドをやっていたから、僕は外のシュートばかり打っていた。そういう環境に加えて、先にも書いたように「遠くからシュートを決めた方がカッコイイ」と思っていた。

 僕は福岡県の出身。西福岡中学校というところに通っていたのだが、当時バスケ関係者が作った「福岡ミックス」のようなDVDがあって、よく観ていた。福岡出身の比江島慎さん(宇都宮ブレックス)や竹野明倫さん(福岡県出身の元Bリーガー)、橋本竜馬さん(アルバルク東京)とかすごい選手のプレーが収録されていて、福岡第一高校だった並里成さん(群馬クレインサンダーズ・元キングス)のプレーとかも入っていた。

 その中でも、特に金丸晃輔さん(三遠ネオフェニックス)はとにかくシュートが上手くて「すげえ」「カッコイイ」と思った。今もだけど、その映像の中で金丸さんが着けていた背番号が14番。漫画「SLAM DUNK」の三井寿もそうだし、シューターという訳ではないけど、並里さんも高校の頃に14番を着けていて、上手い人が14番を着けているイメージがあった。

 だから「14番がカッコイイ」という憧れのような気持ちがあって、僕も高校時代を除いて中学の頃から14番を着けていた。ただキングスではすごい人(#14岸本隆一選手)が既に着けていたから、15番になった。

 もともと遠くから打つシュートが好きで、シューターが自分に合っていると思うから、良い刺激になった。

一日に平日で300本、休日の多い時には1,000本くらい。とにかくシュートが好きだった

 僕がいた中学校はめちゃくちゃシューティングの量をこなすチームだった。チーム練習が終わった後にいつも300本くらいシュートを打ち、休日には一日で1,000本を打ったこともある。2P、3Pで1カ所50本ずつ打って、入ったか、入らなかったかを全部ホワイトボードに書き出す。監督が遅れる時とかも、みんなでそれをやるのが当たり前だった。

 当時からシュートがすごく好きだったから、全然苦にはならなかった。ただ、フォームとか指先の感触とかを考えて練習していたかというと、全くそんなことはない。本数をこなして、自然と体がシュートの入りやすいフォームを覚えていった感じだった。

 あえて言うなら、僕はシュートを打った時に爪から「シュパッ」って音が鳴る。その音が鳴る時の方が入る気はする。とはいえ、あまり気にはしていない。

 土浦日大高校では、チーム練習がとにかくディフェンスばかりだった。オフェンス練習をした記憶はほぼ無い。スリーメンとかで走る練習は多少あったけど、それ以外は常に全力で足を動かすディフェンス練習だった。中学の頃はほとんどディフェンスができない選手で、正直きつい練習も好きじゃなかったから、高校の3年間はずっと怒られていた。

 とはいえ、今の自分がディフェンスを持ち味の一つにできているのは、間違いなく高校の頃に基礎が培われたからだと思う。その意味で、高校は僕のキャリアにとって本当に意味のある期間だった。

 3Pに関して言えば、高校の時はより細かい指導を受けた。ボールに対するミートの仕方とか、膝を曲げる意識とか。スリーポイントラインから1mくらい下がった所から打つ練習も多かったから、ほとんど距離を気にしなくなったのもこの頃の練習の賜物だと感じる。

打てる場面で打たないと流れが悪くなる。「空いたら打つ」意識は無くさないようにした

 大学、プロと進んでいくうちに、チームプレーに関しては少しずつ考えながらプレーすることも増えた。それまでは流れも読まずに「自分が空いた」と思ったタイミングでシュートを打ったりしていたけど、大学ではキャプテンやポイントガードもして、より良いシュートシチュエーションを意識したり、パスを選択したりすることもあった。プロは覚えるフォーメーションが多いから最初は驚いたけど、だんだん馴染んでいった。

 当然相手のレベルも上がっていく。特にプロでは外国籍選手も多く、どのチームも高さがあり、フィジカルも強い。

 3Pに関して言えば、シンプルにマークにつかれるディフェンスの選手のサイズが大きくなった。とはいえ、シュート自体を何か変えたということはない。あえて言うなら、ずっと自分の中にある「空いたら打つ」という意識は無くさないようにした。プロはスピードもあるから、少しでも迷っていたら打てるチャンスがなくなる。そういう意味では、以前に比べてさらに迷いはなくなったように感じる。

 自分が打てる場面で打たないと、チーム全体の流れが悪くなることも多々ある。それはシュートが入る、入らないに関わらずだ。プロはチームバスケがより大事になるから、自分のタイミングがどうこうももちろんあるけど、チームとしての打つタイミングもより意識するようになった。

感情が揺さぶられたらマイナス。常に冷静さを保つということは、自然とそうなった

 「動じない」「落ち着いている」と言われることも多い。確かに言われてみると、全国中学校体育大会で優勝した時も、高校のウインターカップで準優勝した時も、緊張した記憶はない。

 特段目立ちたがり屋とかではないけど、「あいつすげえ」と思われた方が嬉しい。だから緊張よりも「楽しむ」「結果を残す」という考えが先に来る。基本的にあまり深く考えてない、ということも影響しているのかもしれない。

 感情を揺さぶられると、それが自分のプレーやシュートに影響し、左右されてしまう気もする。もちろんそれがプラスになる選手もいるとは思うけど、僕の場合はマイナスに働くと感じる。今までの経験の中で、常に冷静さを保つことが一番良い、というところに自然と落ち着いたんだと思う。

 あとはやっぱり性格的な部分も大きい。もちろんプレーについて考えるべきことは考えているけど、普段からあまり物事をシリアスに考えることがない。そのせいか、学生の頃は「やる気がない」と見られることが多かった。でもコートで結果を出せばいいと思っていたから、あまり気にすることはなかった。

「考え過ぎない」ためには、自信が大事。僕はそのために大量にシューティングをしてきた

 繰り返しになってしまうけど、自分がシュートを打つ上で大事にしていることは何か、と問われたら、「考え過ぎない」ということに尽きる。それを大事にしていると言うとおかしいかもしれないけど、それ以外に表現が見つからない。

 やっぱりシュートを打つ時には迷わない方がいい。あと、シュートを落としても打ち続ける。落とす度に引きずっていたら良いシューターにはなれないだろうし、そんなメンタルだったら僕はプロにはなれていなかったと思う。学生の頃から今まで、ずっとコーチに「打ち続けろ」と言われてきた。それは間違いじゃなかった。

 ただ「考え過ぎない」ためには、自信が大事だ。自信を持つためにシューティング練習をする。僕も大量にシューティングをしてきた。そして、試合で打ち続けることで自信をつけてきた。シュートは急に上手くなることはない。とても根本的なことだけど、シューターに限らず、シュートが上手くなるためにそういう一つ一つの積み重ねが大事だと思う。

 今シーズンもキングスでの自分の役割は変わっていない。#4ヴィック・ロー選手が加入してオフェンスをクリエイトできる選手が多いから、より積極的にボールをもらいに行ってシュートを打つ場面を増やしたい。もっと長い目で見たら、バスケを始めた時ぐらいから、遠くからシュートを決めるのがカッコイイという思いも変わっていない。考え過ぎず、自信を持って、やるべきことをやり続ける。

 空いたら、迷いなく打つ。

#15 松脇圭志

1997年5月15日生まれ。福岡県出身。
2022-23シーズンにキングスに加入。卓越した3Pシュートと、外国籍選手にも当たり負けしないディフェンスが武器。大舞台でも物怖じしない強いメンタルの持ち主。マイブームは海に行くこと。

KINGS_PLAYERS_STORY
https://www.otv.co.jp/okitive/collaborator/ryukyugoldenkings/

あわせて読みたい記事

HY 366日が月9ドラマに…

あなたへおすすめ!